経営計画の作成と進捗管理支援、補助金や助成金の申請サポートを通じて経営者の財務のお困りごとを解決するコンサルティング会社、株式会社ティー・エー・リンクです。
弊社は、決算書や毎月の試算表を見るのが苦手な経営者に対して、決算書や試算表の見るべきポイントを分かりやすく解説することを得意としております。
いま起こっている財務・会計上の課題を的確に抽出するとともに、経営者が描く「将来の目標」「未来のありたい姿」から逆算しながら経営計画を一緒に作成するサポートを行っております。
今回は、黒字倒産についてです。
なぜ黒字倒産が起こるのか
会社が黒字倒産しないためにはどうしたら良いかというテーマでご紹介します。
利益が出ているからと安心していても、実は危険かもしれません。
今回ご紹介するポイントに気をつけて、皆様の会社の経営にお役立ていただければと思います。
目次
本コラムは動画でも解説中!ぜひご覧ください。
黒字倒産とは
「勘定合って、銭足らず」という言葉をご存じでしょうか。
昔から使われている表現ですが、まさに「黒字倒産」の実態をよく表しています。
黒字倒産とは、その名の通り、帳簿上では利益が出ているにもかかわらず、手元資金が不足し、最終的には倒産に至ってしまう状態を指します。
つまり、損益計算書上は黒字であっても、実際に使える現金が足りないために支払いができず、資金繰りに行き詰まってしまうのです。
このように、帳簿の数値と実際の資金の動きにはズレが生じるため、利益が出ているからといって安心はできません。
黒字倒産の要因を解説
では、なぜ黒字であるにもかかわらず倒産してしまうような事態が起きるのでしょうか。
ここでは、代表的な要因についてご紹介します。
1つ目の要因は、「売上は上がっているのに代金の回収ができていない」というケースです。
現金商売をしている場合は起こりにくい問題ですが、取引先との契約条件によっては、例えば「今月の売上については翌月末に回収」「翌々月末に回収」など、回収までにタイムラグがあることも珍しくありません。
しかし、取引先からの入金が予定より遅れ、気が付くと3〜4か月経っても回収できていないということも起こり得ます。
原因としては、取引先側のうっかりミスによる支払い忘れ、あるいは、こちら側が請求書を発行していなかったといった事務的な問題も考えられます。
いずれにせよ、帳簿上では売上が計上されていても、実際に現金が回収できていなければ、いわゆる「勘定合って銭足らず」の状態となり、黒字倒産のリスクが高まります。
2つ目の要因は「過剰在庫」の問題です。
売れると見込んで商品を多く仕入れたり製造したりしたものの、実際には思うように売れず、在庫として残ってしまうケースです。
在庫を増やす際には当然ながら現金が出ていきます。
しかし、売上が立たなければ、現金は回収されません。
その結果、在庫が増える一方で資金が不足し、やはり黒字倒産に陥る原因となります。
3つ目の要因は、「過剰な設備投資」です。
将来的な増産や需要拡大を見越して設備投資を行ったものの、思いのほか受注が伸びず、結果として設備が遊んでしまう、ということもあります。
設備を導入する際にも多額の資金が必要となりますが、その後に売上が伴わなければ、資金回収ができず、資金繰りを圧迫する要因となります。
4つ目の要因は、「借入金の返済負担が大きすぎる」というケースです。
利益は出ているものの、利益以上の返済を続けていることで資金が手元に残らず、資金繰りに悩まされ、黒字倒産に追い込まれることが要因になります。
最後に、「税金の納付額が大きい」ことも、黒字倒産の要因となります。
法人税や消費税の納付は、利益や取引額に応じて一定割合で課税され、一括で支払うことが多くあります。
こうした納付が一時的に大きな資金流出となり、資金不足につながるケースも少なくありません。
リスク回避手段
黒字倒産のリスクを防ぐためには、損益計算書だけで経営判断を下すのではなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書、さらには資金繰り表といった財務資料を総合的に確認することが重要です。
売上が上がっているかどうかは損益計算書を見れば分かりますが、その代金が実際に回収できているかどうかは、貸借対照表やキャッシュフロー計算書、資金繰り表を見なければ判断できません。
帳簿上は黒字でも、現金が回収できていなければ資金繰りに窮し、黒字倒産に陥る可能性があります。
たとえば、売掛金の回収が滞っている場合には、債権回収・債権管理が適切に行われているかどうかを見直す必要があります。
売掛金の回収状況を把握できる仕組みやシステムを整え、常に債権の状況を確認できる体制を構築することが求められます。
在庫についても同様です。
過剰在庫の有無を確認するには、在庫管理の仕組みが不可欠です。
「何の商品が」「どれだけ」「どこにあるのか」を常に把握できる体制を整えることで、適正在庫を維持し、キャッシュフローを圧迫しない経営が実現できます。
また、設備投資を行う際には、必ず投資対効果のシミュレーションを実施することが重要です。
実際には蓋を開けてみないと結果は分かりませんが、たとえ売れ行きが好調でも、安易に「増産のために機械を導入しよう」と判断するのは危険です。
どれだけの需要増が見込まれるのか、さまざまなデータを元に慎重に検討した上で、投資を行う必要があります。
借入金についても、あらかじめ金額と返済タイミングの通知を受けている以上、事前に把握しておくことが可能です。
また、税金の納付額も大まかな見積もりであれば、会計事務所等に聞かずとも把握することは可能です。
こうした状況を踏まえると、迅速に意思決定を行うためには、日頃から財務情報をタイムリーに確認できる環境整備が必要不可欠です。
債権回収や在庫管理に加え、財務情報を適切に把握できる仕組み、すなわち「決算書」や「試算表」ではなく、「管理会計」の仕組みを導入することが求められます。
経営管理においては利益だけでなく、キャッシュベースでの管理が非常に重要です。
借入金の返済や税金の納付などは損益計算書には現れません。
これらを適切に管理するためには、貸借対照表や資金繰り表、キャッシュフロー計算書の確認が欠かせません。
キャッシュベースでの経営管理を実践することで、黒字倒産のリスクを大きく回避することができます。
今回は「黒字倒産」についてご紹介しました。
ニュースなどでも耳にする言葉ですが、どの企業にとっても無関係ではありません。
最後にお伝えしたとおり、損益計算書だけでなく、貸借対照表・キャッシュフロー計算書・資金繰り表といった財務情報を総合的に確認できる環境づくりが重要です。
管理会計の視点を持ち、財務情報を正しく把握することで、黒字倒産のリスクを未然に防ぎ、より健全で持続可能な経営体制を構築することができます。
今回のブログを通じて、少しでも皆様の会社の財務管理のお役立ていただければ幸いです。
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